ママの悩みQ&A

ママの悩みQ&A

母乳育児の悩み

母乳が足りていない?飲ませても飲ませても泣くんです

当院にいらっしゃるママたちは、左右の乳房を10分ずつというように時間を測って授乳しておられる方が多いです。
スマホのタイマーできっちり10分間測っておられる方も珍しくありません。授乳時間を測るアプリもママたちの間で普及しているようです。
この10分ずつというような時間を測っての授乳は母乳分泌不足、乳房トラブルにつながりやすいと私は思っています。

赤ちゃんは乳房にたまっている母乳を飲むだけではなく、授乳の途中で湧き出してくる母乳も飲みます。
赤ちゃんがママのおっぱいを吸うと、吸われた刺激がママの脳に伝わり、母乳を作るホルモンが分泌されて母乳が瞬間的に作られ湧き出してきます。この現象を「射乳」といいます。(乳房の機能が弱くなっている時は射乳は起きにくいです。)

射乳がおこると、母乳が出てくるので赤ちゃんはゴクゴクと飲みます。が、しばらくするとゴクゴク飲まなくなります。何故でしょうか?

それは母乳が出なくなるからです。
多くのママたちは「母乳は授乳している間(赤ちゃんがおっぱいをくわえている間)ずっと出続けている。」と思ってらっしゃいますが、ずっと母乳が出続けることはありません。射乳している間だけ出ます。

それは、どのくらいの時間かというと、個人差はありますが、だいたい60秒くらいまでです。あっと言う間に終わります。
射乳が終わると母乳は出なくなるので赤ちゃん飲むのを止めてしまいます。
おっぱいの先をくわえたまま眠ってしまう赤ちゃんも多いです。ママはその様子を見て、「お腹がいっぱいになって寝たんだ。」と思ってベッドに寝かせます。

けれども、赤ちゃんは十分な量の母乳を飲んでいるわけではないのですぐ泣いて起きます。「あっ!ウッカリ寝てしまったけど、ボク(ワタシ)まだお腹空いてるわ!」と気づくのですね。
泣いている赤ちゃんを見て、ママは「さっき飲ませたのになあ?、、、何故?、、」と思いつつまた授乳します。
そうしているうちに、

授乳する→
寝たのでベッドに寝かせる→
すぐに起きて大泣き →
授乳する →
寝たのでベッドに寝かせる→
すぐに起きて大泣き→
授乳する

という負のスパイラルに陥ってしまう事もあります。

これが続くとママのおっぱいの先は痛くなることが多いです。
また、痛いだけではなく、母乳が出る穴が傷ついて狭くなってしまうので、スムーズに出れなくなった母乳が乳房内に残りやすくなります。

その結果、乳房が全体的にあるいは部分的に張って痛い、白斑が出来て痛いなどのトラブルにつながってゆく事もあります。
また、乳房内に常に母乳が残ることで分泌量が減ってしまう事も多いです。

そうすると赤ちゃんは十分な量の母乳が飲めないので、ますます何回も起きて泣くという状態になりがちです。
ママは寝る暇もなくおっぱいも痛いので、次第に心身ともに疲れきって「飲ませても飲ませても赤ちゃんが泣く!」「授乳が苦痛!」「授乳がしんどい!」 となってしまいます。

では、どうすれば良いのでしょうか?
赤ちゃんがゴクゴク飲むのを止めたらすぐにもう一方のおっぱいに交代すると良いのです。

射乳は左右のおっぱいに同時に起こります。例えば右のおっぱいを吸っている時に射乳が起こると左のおっぱいに射乳した母乳がたまっていきます。赤ちゃんが眠ってしまわないうちに左に交代すると、左のおっぱいには母乳があるので、すぐに飲む事が出来ます。
そして左を飲み終わると赤ちゃんはまた眠ってしまいそうになりますが、眠ってしまわないうちに右に交代します。交代しても眠ってしまいそうになったら、また左に交代します。
せわしない感じがしますが、このように「赤ちゃんに眠るスキを与えない」ように左右の乳房を交代して授乳するようにすると、 赤ちゃんは起きているのでおっぱいをしっかり吸います。
しっかり吸うので、もう一度射乳が起こりやすくなります。射乳が起こると母乳が湧き出て来るので赤ちゃんは眠ってしまわないで飲みます。

このように、右○分 左○分と決めてしまわないで、赤ちゃんの飲む様子を観察して左右を交代する方が射乳が起こりやすくなるので、一回の授乳で飲む量が増えていきやすいです。

交代のタイミングがわからないという場合は、
赤ちゃんの飲む力が弱くなったら交代すると良いでしょう。 赤ちゃんが小さいうちはこのように授乳に手間暇がかかりますが、赤ちゃんが大きくなってくると飲む力もついてきますし授乳中あまり眠らないようになってきますので、こまめな交代は必要なくなってきます。

余談ですが、授乳の時はいつも「おかわり行くよ」と赤ちゃんに声をかけて左右を交代していたママさんがいらっしゃいました。
その赤ちゃんが3ヶ月くらいになった頃、ママが「おかわり行くよ」と声をかけると「ハイ、わかりました」という感じで飲むのをやめて交代してもらうのを待つようになりました。
その様子が可愛くて可愛くて。赤ちゃんって本当に分かってるんだなぁと思った次第です。

体格、体質、乳房の形、乳房の大きさは人それぞれ違います。射乳の量・回数も人それぞれ違います。
射乳の一回の量が多くて回数が少ない、量は少ないけれど回数が多いとか様々です。

また、同じママでもお腹が空いているかどうか、喉が渇いているかどうか、緊張しているかリラックスしているか、などによっても射乳の量や回数は変化します。
赤ちゃんもいつも同じではありません。ウンチが大量に出た後は空腹だろうし、朝などは遊んでほしいからあまり飲まないとか、赤ちゃんにもいろいろ事情があります。

だから、時間を決めて時計やスマホを見ながら授乳するのではなく、赤ちゃんの様子を見ながら授乳する方が合理的と言えます。

このように授乳しているとそのうちに赤ちゃんと視線が合うようになってきます。
赤ちゃんは、ママに見守られながら母乳を飲む方が安心だし嬉しいんじゃないかなと思います。
お互いに見つめ合いながらの授乳はとても幸せなひと時ですね。

最後にミルクの補足についてですが、必要な量は足しましょう。
当院には「母乳だけで育てたい」と頻回な授乳で頑張っているママもよくいらっしゃいます。が、乳房の状態によってはミルクの補足が必要な方も多いです。必要な量が飲めないと赤ちゃんの成長にも影響します。
睡眠不足で疲れきっている時は母乳の分泌は少なくなりやすいですので、ミルクを補足して睡眠をとった方が良いです。
どのくらいのミルクを補足したらよいかどうかは乳房の状態・赤ちゃんの様子によって判断した方が良いので、可能であればお近くの母乳相談室を訪ねてみてください。
※ 最近は「赤ちゃんのお顔が見えるような授乳の抱っこ」が苦手な方も多いです。これについてはまた書きますね。

授乳の抱き方がうまく出来ません

当院に来院されるほとんどのママたちは、母乳育児を望んでいるけれども思うようにいかないという事でいらっしゃいます。

母乳の出が悪い、赤ちゃんがおっぱいに吸いつけない、おっぱいの先が痛い、シコリが出来て痛いなどのご相談が多いです。

母乳育児がうまくいかない最も多い原因の一つが「授乳時の赤ちゃんの抱き方」です。

「授乳時の赤ちゃんの抱き方」は、おっぱいトラブル・分泌不足などと密接な関係があります。

数年前から、当院に来られるママたちの授乳の時の抱き方は、ご自分のお腹と赤ちゃんのお腹を密着させてらっしゃる方が多いです。

多いというよりほとんどの方がそのように授乳しておられます。
「赤ちゃんの身体を自分の身体にベルトみたいに巻きつけるようにして抱いています。」という方もいらっしゃってびっくりします。

「赤ちゃんに母乳をたくさん飲ませたい」「しっかり吸わせたい」という思いでそのように授乳しておられるのだと思います。

けれども、当院に来院される方々の乳房の状態、赤ちゃんの飲む様子を拝見していると、ママのお腹と赤ちゃんのお腹は密着させすぎない方が良いのではないかと思います。

●おっぱいをたくさん飲めないことがあります

「お腹とお腹を密着させて授乳する」と、赤ちゃんの顔はうつむきがちになります。

うつむいてしまうと、口を大きく開ける事が出来ません。大きい口を開けられないので、ママの乳首を深くくわえることが出来なくなります。そのため、乳首の先の方を吸ってしまいます。

(私たち大人も上を向いた方が口を大きく開けられますし、飲み物を飲む時もちょっと上を向いて飲みますね。うつむくと飲みにくいです。)

乳首の先は吸っても母乳はあまり出ません。母乳が出る所は乳首の先よりももう少し奥の方にあります。

赤ちゃんはあまり出ない乳首の先を吸うので、お腹がいっぱいにならないため頻回に欲しがって泣くことが多くなり、ママも睡眠不足になって疲れがたまっていきます。

赤ちゃんの口元が見えません。

●赤ちゃんの鼻の穴がママの乳房にくっついてしまうため、呼吸しにくくなります

赤ちゃんの鼻が乳房にくっつかないように指で乳房を押さえて空気が入る隙間を作ってあげているママも多いですが、ずっと指で押さえているのはけっこう大変です。

  「赤ちゃんが乳首を嫌がり、のけぞって飲みません」という相談は多いのですが、赤ちゃんが呼吸しやすいように抱き方をちょっと変えるだけで、嫌がらずに飲めるようになる事はよくあります。

赤ちゃんの鼻が乳房にくっついています

●おっぱいトラブルとの関係

赤ちゃんは大きな口を開けにくいので乳首の先を吸いがちです。
そのため乳頭の先に負担がかかって、乳首の亀裂や白斑が出来ることがあります。

乳首の亀裂や白斑はとても痛いです。
痛いだけではなく、このような状態が続くと、おっぱいが出る穴(排乳口)が傷んで狭くなり詰まりやすくなります。

完全に詰まってしまうと母乳がスムースに出なくなるため、乳房内に母乳がたまって張って痛くなったり、部分的に固まってシコリのような状態になることもあります。

また、それだけではなく、赤ちゃんの顔がうつむくために、
赤ちゃんの上の歯茎がお母さんの「乳首の上の付け根」に当たる事があります。

赤ちゃんといえども歯茎は硬いです。硬い歯茎が当たった状態で赤ちゃんに吸われると
「乳首がはさまれている」「噛まれている」ような感じがしてとても痛いです。

このような状態が長期間続くと、乳首の上の付け根に亀裂が出来て出血することもあります。この状態を「乳頸亀裂」と言います。もちろんとても痛いです。

授乳のたびに痛みにさいなまれる事は、母乳育児を望んでいるママたちの心を折ってしまうこともあります。
「授乳する度にものすごく痛くて辛いです。」
「赤ちゃんがお腹を空かせて泣いている口を見ると恐怖を感じます。」というママたちは多いです。

以前いらっしゃったママは痛みに耐えるために、ご自分の太ももを指で思いきりつねりながら授乳しておられました。「つねっていると乳首の痛みがまぎれるんです。」と。
その方の太ももには青あざが出来ていました。

耐えがたい痛みが続くため「母乳育児は諦めてミルクにしたいので母乳を止めてください。」と来院される方もいらっしゃいます。

●肩、背中、腕がしんどい

授乳の間中、赤ちゃんのお腹を自分のお腹に密着するには、それなりの力を要しますし、かなり前かがみな姿勢になりがちです。

●ママと赤ちゃんの視線が合いにくい

お腹とお腹を密着させて抱っこすると、赤ちゃんの顔はお母さんの腕の向こう側を向いてしまいます。そのためお母さんと赤ちゃんとは視線が合いにくくなります。

生まれたての赤ちゃんは授乳中目を閉じている事が多いですが、日が経つにつれて眼を開けて飲むようになってきます。

赤ちゃんがおっぱいを飲みながら目を開けた時、「お母さんがいない、、、。」「誰もいない、、、。」って。寂しくないですか? 見えるのは、お母さんの腕やお母さんの服、あるいはお母さんの腕越しに見えるお部屋の様子。。。

お腹の中では、お母さんの心臓の音、お母さんが話したり歩いたりした時の振動、お母さんの息づかいを感じていたのに。
お母さんに抱っこされておっぱいを飲んでいるはずなのに、赤ちゃんの視線の先には、お母さんはいないんです。

ママたちも授乳の時は赤ちゃんと視線が合うものだと周囲の人たちから聞いているので、何とか目を合わそうとしてらっしゃいます。けれども、どうしても目が合わないし、そのうちに手持ち無沙汰なのでついついスマホを見てしまうという方も多いのではないでしょうか?

でも、赤ちゃんがご自分の目をじっと見つめながらおっぱいを飲んでいたら、可愛くてスマホを触る気にならないんじゃないかな?と思います。

また、可愛いだけではなくて、おっぱいを飲みながら赤ちゃんがお母さんの顔、表情を見る事はとても意味があります。

黒川氏は、「授乳中、赤ちゃんの口角周辺の筋肉は、三次元的に微細に動いている。
このため、お母さんの表情筋を読み取って、自分の表情筋に伝えやすいのである。ミラーニューロンが最も有効に使われる時間と言っても過言ではない。
その授乳中、お母さんが赤ちゃんに意識を集中し、目を合わせたり、微笑んだり、話しかけたりすることが、ことばとコミュニケーションの認識フレームを作り出す。共感力の要になるのである。」※1
と述べています。

赤ちゃんはママの表情の動きを鏡のように写し取って言葉を獲得するだけでなく、共感力も育んでゆくのですね。

授乳の時間は、赤ちゃんにとってもママにとっても期間限定の貴重なひとときです。お互いの目を見つめながら授乳出来たらとても幸せな気持ちになれるでしょう。

●どのように抱っこしたら良いのか?

乳房が大きめなママの場合
写真のように、赤ちゃんの背中、お尻をママの膝(あるいは授乳クッション)の上において、赤ちゃんの顔をママが見えるように仰向けます。ママを見上げる感じです。

乳房が小さめなママの場合
乳房が小さめなママがこのように抱くと乳首の位置が遠いため、赤ちゃんの首は乳首の方にねじる形になり首に負担がかかります。
そこで、赤ちゃんの全身ををママのお腹の方へやや傾けるようにして抱きます。

乳房が大きめのママの場合

(注)イラストは左手で赤ちゃんの頭と首、背中を支えていますが、クッションなしで写真のように抱くと首に負担がかかります。
このように抱く時は赤ちゃんの頭と身体をクッションに乗せるようにしましょう。

乳房が大きめのママの場合

このように抱っこすると赤ちゃんは口を大きく開ける事が出来ます。

赤ちゃんの鼻が乳房にくっつくこともないので楽に呼吸しながら母乳を飲めます。もちろん赤ちゃんの歯茎がママの乳首の付け根に当たらないので痛くありません。

また、赤ちゃんが生まれて間もない頃は、上のイラストのようにママの手で乳房を少し持ち上げてあげると、赤ちゃんの口に乳房の重みがかからないので疲れにくく、下アゴも動かしやすくなります。

●乳首を赤ちゃんの口に入れる時のコツ

赤ちゃんの口より上に乳首をもってくる
乳房を手で下から支えて、乳首を赤ちゃんの口より上にします。

どうしてかと言うと、例えば「パン食い競争」でパンをくわえる時、自分の口より上にあるパンと下にあるパンではどちらがくわえやすいでしょうか?大きな口を開けられるので上にあるパンがくわえやすいですね。

(最近はパン食い競争ってあまり見かけないですが)

多くのママたちは「赤ちゃんの頭に手を当てて、乳首に引き寄せる」と思っていらっしゃいますが、そうすると赤ちゃんの顔はうつむいてしまい大きな口が開けられません。
良くない例です↓

親指の位置は赤ちゃんの耳の上にあります

では、どうすれば良いかと言うと

赤ちゃんの背中とお尻に腕の内側を当てて、赤ちゃんの頭の下部と首と背中の上部(肩甲骨のあたり) に手を当てそっと乳首に引き寄せます。

良い例です↓

親指の位置は赤ちゃんの耳と同じ高さにあります

このようにすると赤ちゃんの顔は上を向きますので、大きな口を開ける事が出来て乳首をくわえやすいです。また、ママの顔もよく見えます。

イラストのようにご自身の親指の位置を意識すると良いです。

また、このイラストでは右の乳房を授乳する時に左腕で抱いていますが、授乳に慣れていない時はこの抱き方がくわえさせやすいです。慣れてきたら途中で右腕に替えれば良いでしょう。

以上で飲ませ方のお話は終わりです。

皆さまの参考になれば幸いです

※出産したばかりの頃はママの乳頭・乳輪部は硬い事が多いので、授乳前に手で搾乳するとくわえさせやすいです。
搾乳の方法についてはまた改めてお話します。

※1黒川伊保子:共感障害.新潮社, p195- p196,2019年

乳首の傷や白斑に保湿剤を塗ってラップを貼っていますが治りません

当院では母乳分泌不足だけではなく、乳房のトラブルや乳首のトラブルなどでも来院されます。
乳首トラブルは白斑や乳頭亀裂、水泡などですが、来院される方の多くはワセリン・馬油・ランシノーなどの保湿剤を塗ってラップを貼っておられます。
「乳首の先が痛くて授乳が辛いです。薬を塗ってラップを貼っていますが、なかなか治りません。どうすれば治りますか?」といった相談が多いです。

傷にワセリンなどの保湿剤を塗りラップなどを貼って傷の治癒を促す療法はあります。
あまり重症ではない傷や火傷などに効果がありますが、乳首の傷などには適しません。

なぜかというと皮膚が違うからです。

乳首の皮膚と手足や背中・腹部の皮膚との大きな違いは「乳首の皮膚は排乳口という母乳が出る穴が開いている皮膚である」ということです。

母乳は赤ちゃんが飲んでいない時も分泌されますので、ラップを貼ってしまうと母乳が外に排出されなくなりラップの中に長時間とどまります。
母乳は糖質をたっぷり含んでいて栄養豊富ですので、細菌が元気になってしまうために傷が治りにくいと考えられます。

当院では、乳首のトラブルで来院された方に次のようにお伝えしております。

①傷から浸出液(汁)が出ている場合↓
保湿剤を薄く塗ってガーゼなどを貼りブラジャーなどをつける

②傷から浸出液(汁)が出ていない場合↓
保湿剤を薄く塗ってブラジャーなどをつける

「薄く塗る」理由は、たっぷり塗ると母乳の排出を妨げやすくなるからです。

また、乳首の傷を治すには保湿剤を塗るだけではなくて、 授乳方法を見直す事がとても大切です。
例えば、乳首や乳輪部が硬いままで授乳すると赤ちゃんは乳首の先っぽをくわえてしまいがちです。
乳首の先っぽを吸われると大変痛いだけでなく乳首のトラブルは治りにくくなります。
どうすれば良いかと言うと、授乳前に手で搾乳すると良いです。
搾乳すると乳首の先と乳輪部が柔らかくなりますので赤ちゃんは深くくわえやすいです。
深くくわえた方が痛くないですし乳首トラブルは治りやすいです。
また、授乳の抱き方と飲ませる時間 (左右の乳房の交代のタイミング)もとても重要です。

以上のように、乳首にトラブルのある時は、保湿剤を薄く塗ってラップを貼らないで授乳方法を見直すことで治りやすくなります。
※1) 授乳の抱き方についてはママの悩みQAページの「授乳の抱き方がうまく出来ません」をご参照ください。

※2) 飲ませる時間(左右乳房の交代のタイミング)についてはママの悩みQAページの「飲ませても飲ませても泣くんです」をご参照ください。

手での搾乳方法についてはまたお話しますね。

白斑の原因と治し方が知りたいです

白斑とは?

乳頭先端にみられる直径1mmから5mmくらいの白い斑点で、授乳する時に針で刺されるような強い痛みを伴います。
白斑が出来ると、乳管が詰まって母乳が乳腺内にとどまるためにシコリが出来ることが多いです。
よくあるトラブルです。

白斑の原因は何?

白斑の原因は、
「乳首の皮膚に負担のかかる授乳」です。
乳首の皮膚は腕・足・お腹・背中などの皮膚と違って「非常に薄くて傷つきやすい」のです。
そのため、授乳のやり方によっては乳首の皮膚に負担がかかり様々なトラブルがおきやすくなります。
そのトラブルの一つが「白斑」です。

負担のかかる授乳ってどんな授乳なの?

乳首に負担のかかる授乳とは次の三つです。

1.長い時間吸わせる

多くのママさんたちは、「乳首を長く吸わせれば吸わせるほど赤ちゃんは母乳を沢山飲める」「吸わせれば吸わせるほど母乳が出てくる穴の開通が良くなる。」と思ってらっしゃいますが、射乳(母乳が出てくる)が終わると母乳はほとんど出なくなるので、おしゃぶりのように吸っているだけになる事が多いです。
おしゃぶりのように吸っているだけの時間が長くなればなるほど乳首の先の皮膚に負担がかかります。

2.頻回すぎる授乳

新生児の頃は飲む力もそれほど強くないので一回の授乳で十分な量を飲めない事が多いです。
そのためすぐにお腹が空くので頻回に授乳する必要がありますし、頻回に授乳することで分泌が増えやすくなります。
けれども限度を超えると乳首に負担がかかることが多いです。

3.乳首・乳輪が固いまま吸わせる

乳首・乳輪が固いと赤ちゃんの舌が滑って深くくわえられない為、乳首の先を吸ってしまいます。
そうすると非常に痛いだけでなく乳首の先に負担がかかります。

白斑が出来るしくみ

こののような乳首の先に負担がかかる 授乳が続くと

乳首の皮膚に圧力がかかる

乳首の皮膚の血行が悪くなる

乳首の皮膚の栄養分・水分が不足する

皮膚が硬くなる

白斑ができる。

※座りダコ、ペンダコ、靴づれなどに似ています。

白斑を治すには?

白斑を治すには、白斑のある方の乳首に負担のかからないように授乳する事が大切です。
けれども、多くのママたちは白斑が出来ると、しっかり吸わせるとポロリと取れるような気がして、白斑のある方を長い時間、頻回に吸わせてしまっています。
それは逆効果なのです!

長い時間・頻回に吸わせると、乳首の先に負担がかかり、痛みはひどくなり白斑は数が増えたり大きくなっていきます。
五円玉の穴よりも大きくなってしまったママもいらっしゃいました。そこまで大きくなると物凄く痛いので授乳はかなり困難となります。

白斑がある時の授乳方法のコツ!

①白斑のない方から授乳する

なぜかと言うと赤ちゃんは飲み始めはお腹が空いているので必死で強く吸い付きます。
それが白斑が出来て傷んでいる乳首には負担になるので、白斑のない方から授乳します。

②射乳が起きたら白斑のある方を吸わせる

赤ちゃんの飲む様子を観察していると、最初はチュクチュクと乳首の先を吸っています。しばらく吸っていると射乳(母乳が出てくる)してくるので、赤ちゃんは急にゴクゴクとしっかり吸いはじめます。

その時に白斑のある方に交代します。「さあ、出てきたぞ!」と飲もうとしている赤ちゃんには申し訳ないんですが。

なぜ、そうするのかと言うと、射乳がおきている時は、赤ちゃんの口に母乳が吹き込んでくるため乳首に負担をかけないで吸うからです。

また、交代した方の乳首からは母乳は出ていないと思われるかもしれませんが、射乳は左右乳房同時におこりますのでもう一方の乳首からも母乳が出ているので大丈夫です。

※交代する時は黙って交代せずに、赤ちゃんに「交代するよ」など声をかけてくださいね。

③射乳が終わったら白斑のない方を吸わせる

射乳が終わると赤ちゃんの口に母乳が吹き込んでこなくなるので、赤ちゃんは乳首の先をチュクチュクと吸います。

チュクチュクと長い時間吸われると乳首の先に負担がかかってしまいますので、白斑のない方に交代します。

④以上のように左右の乳房を何回か交代して最後は白斑のない方で終わる

母乳を飲んでお腹がいっぱいになっても、しばらくの間は赤ちゃんは乳首を口に含んでママに抱っこしてもらって甘えていたいのです。それはママにとっても大切な時間ですね。

けれども、その時間が長すぎるとやはり乳首に負担がかかります。
白斑のある方を長く吸わせていると白斑は治りにくくなります。
最後は白斑のない方を吸わせるようにしましょう。

射乳してくるという感じがよくわからない場合は?

白斑のない方から吸わせる、白斑のある方を吸わせすぎないようにするようにするだけでも良いです。

両方の乳首に白斑が出来ている場合は?

少しでも痛みがマシな方から授乳しましょう。

白斑が痛すぎて授乳が苦痛という場合は?

短時間だけ吸わせるか、それも苦痛なようなら授乳を中止して搾乳だけにします。

白斑がある時に心がける事

長い時間吸わせ続けない

赤ちゃんの様子や吸われている感じに意識を向けて「あまりしっかり吸っていないな」と感じたらもう早めに(赤ちゃんが眠ってしまわないうちに)一方の乳房に交代する。

これを何回か繰り返す。
吸わせる時間についてはこちらをご覧ください

添い乳は長い時間吸わせがちですので、しない方が良いですが、どうしてもという場合には白斑のない方を吸わせるようにしましょう。

頻回に授乳しすぎない

赤ちゃんがしっかりと空腹になってから授乳する。
寝かせるためにおしゃぶりのように吸わせすぎないようにする。

授乳間隔が大幅に開かないようにする

授乳間隔が4から5時間以上開くと乳房が張って乳輪が硬くなるので、赤ちゃんの舌が滑ってしまって乳首の先をくわえてしまいがちです。

そうすると乳首の先に負担がかかります。
出来るだけ授乳間隔が大幅に開かないようにしましょう。

乳首を柔らかくしてから授乳する

授乳前に手で搾乳すると乳首・乳輪が柔らかくなって赤ちゃんはくわえやすくなり、乳首の先に負担がかかりにくいです。

授乳の抱き方を工夫する

授乳のだき方についてはこちらをご覧ください

食事に気をつける

1.砂糖の食べ過ぎに注意する
白斑がある時は排乳口(母乳が出てくる所)が細くなっているため大変詰まりやすいです。

当院にトラブルで来院される方々の乳房の状態を拝見しておりますと、やはり甘いものは詰まりやすいと思います。

お菓子だけでなく砂糖が多く含まれている食品(とんかつソースやステーキソース、焼肉のタレ、お寿司など)もトラブルがある間は取りすぎない方が良いです。

和食中心が良いとよく言われていますが、和食は他の料理に比べて砂糖を使う割合は多いです。

煮物などに砂糖をたくさん使うというご家庭もありますね。
乳房トラブルがある時は砂糖の量を控えた方が良いでしょう。

2.食事制限について
また、詰まるのが怖くて過度の食事制限をなさっている方も多いです。

以前、「毎月のように乳腺炎になって困っている」という事で来院された方がいらっしゃいました。
その方は「詰まってシコリが出来て乳腺炎になるのが怖いから」と長い間ご飯と野菜しか食べておられませんでした。
栄養不足の食事が続いて、貧血や免疫力が低下したことも乳腺炎になりやすくなった一因と思います。

肉、魚、大豆、などのタンパク質は積極的に食べた方が栄養状態が良くなるので白斑は治りやすいです。

油を使ったお料理は大量に食べなければ影響しないです。
また、アレルギーがないようでしたら卵・乳製品も食べてください。

水分は我慢せずに取る事

白斑が詰まってシコリがある時は、水分を取るとシコリが大きくなるような気がして我慢する方が多いですが、水分が少ないと母乳の濃度が高くなって余計に詰まりやすくなります。
また、夏場は熱中症が心配です。
我慢せずに飲みたいだけ飲みましょう。

体調に気をつける

白斑がある時は排乳口が詰まって乳腺炎を引き起こす場合があります。
身体が疲れて抵抗力が落ちている時は乳腺炎になりやすいですので、家事などは頑張ってせずに身体を休めるようにしましょう。

白斑はどのくらいで治るの?

白斑は長い時間、乳首の皮膚に負担がかかって出来るものですので、治るには時間がかかります。
手足に出来たタコや靴ズレも治るには時間がかかるのと同じです。
白斑が出来てすぐに適切な授乳をすると1週間くらいで治る事が多いですが、日にちが経っている場合は1ヶ月以上かかる事も少なくありません。
保湿剤とラップについて
白斑が出来たら保湿剤を塗ってラップを貼る方が多いですが、ラップを貼ると治りにくくなります。
保湿剤とラップについてはこちらをご覧ください

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授乳中、噛まれているように痛くて辛いです
授乳中の乳首の痛み

当院でお受けする母乳育児相談で、授乳中の乳首の痛みに関する事は、とても多いです。

「乳首の痛み」の原因は「白斑」「乳栓」「咬み傷」などいろいろあります。

原因によってその対処方法も変わってきます

今回は、
赤ちゃんに授乳している時に 

「乳首が噛まれている感じがして痛い」

「乳首をはさまれている感じがして痛い」

などの原因と対処方法についてお話します。

このような授乳中の痛みで困っておられるママの

「乳首の上のつけ根」

を拝見しますと、少し赤くなっていたり、線状の細い傷がついている事が多いです。

「ここは痛いですか?」とその部分を指で軽く押すと「痛いです!」とおっしゃいます。

原因は何なの?

「乳首の上のつけ根」に傷が出来る主な原因は、授乳中の赤ちゃんの抱き方にあります。
どのような抱き方かと言うと「 赤ちゃんのお顔がうつむいてしまう」ような抱き方です。

赤ちゃんのお顔がうつむいてしまうと、

ママの「乳首の上のつけ根」に赤ちゃんの歯茎が当たります。

また、お顔がうつむくと

顎が引けてしまいますので、舌を前に出しづらくなりますし、口も大きく開けられませんから乳首の先しか吸えません。

歯茎が当たった状態で、乳首の先を吸われると「乳首の上のつけ根」に常に強い力が加わります。

このような授乳が何回も繰り返されることで痛みは増していくだけでなく、やがて傷が出来てしまいます。

この傷が深くなって、パックリと割れてしまったり化膿する事もあります。

では、そうならないようにするには、どうすれば良いのでしょうか?

授乳の時、赤ちゃんのお顔をあお向けるように抱っこします。

コツとしては、赤ちゃんの後頭部に手を当てるというよりも、

赤ちゃんの後頭部と肩甲骨の間くらいに手を当てて乳房に引き寄せるようにすると、赤ちゃんの顔は上を向きやすくなります。

その際に下記のイラストのように、ご自身の親指の位置を意識してみると良いでしょう。

赤ちゃんの鼻とママの乳房の間に小指一本分くらいの隙間を作るようにすると良いです

こうすると、赤ちゃんの歯茎はママの乳首の上のつけ根に当たらないですし、赤ちゃんのあごは引けてしまわないので、口を大きく開けられます。

舌もしっかりと前に出せますから、深くくわえられるので痛みもなく傷も出来にくくなります。

私たちも飲み物を飲む時はちょっと上を向きますよね。

その方が飲みやすいです。

うつむきながら飲み物を飲んでいる人はあまり見かけません。

また、上を向いた方が口も大きく開けられます。

当院に来院されるママたちの授乳の様子を拝見していますと、

10年ほど前から
「ご自身のお腹と赤ちゃんのお腹を密着させるように抱いて授乳する」方が多くなったなと感じます。

たぶん、赤ちゃんに乳首を深くくわえてもらうためなのでしょう。

けれども、ママと赤ちゃんのお腹が密着しすぎると、赤ちゃんのお顔がうつむきがちになって乳首のつけ根に赤ちゃんの歯茎が当たってしまう事が多いです。

ですので、

「赤ちゃんに深くくわえさせる」事よりも、
「赤ちゃんが大きな口を開けやすいように」という事を
意識してみてはどうでしょうか?

参考になれば幸いです。

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おっぱいを飲む時にむせます
おっぱいを飲む赤ちゃん

赤ちゃんは、おっぱいを飲む時に「むせる」事があります。 赤ちゃんがむせながら飲んでいる様子を見て「むせるほど母乳が出ているんだわ。」と良い事のように思っているママもいらっしゃいますが、出来るだけむせないで飲める方が良いです。

今回は、何故むせない方が良いのかについてお話します。


むせながらおっぱいを飲んでいる赤ちゃんの様子

むせている時の赤ちゃんはゴホゴホと咳き込んだり、呼吸もゼイゼイと苦しそうです。

ビックリして乳首を離して飲むのをやめてしまうこともあります。

おっぱいを飲む事がなんだか辛そうに見えます。

また、授乳後に仰向けに寝かせると、真っ赤なお顔で両手を挙げてきばる赤ちゃんが多いです。

そしてオナラをよくします。

それは、むせる時に母乳と一緒に空気も飲んでしまうからです。

空気を飲むとお腹が張ります。

お腹が張っている時に仰向けに寝るのはしんどいですから、きばってオナラを出そうとしているのでしょう。

オナラと一緒に「ちょびっとウンチ」をする事も多いですので、オムツかぶれにもなりやすいです。オムツ替えの回数が増えるのでオムツ代もかさみます。

むせる原因は?

「母乳が出過ぎている場合は赤ちゃんはむせやすいですが、それほど出過ぎていないけれどむせる事はよくあります。

なぜむせるのかと言うと、

「おっぱいが噴射するように赤ちゃんの口の中に勢いよく流れ込むから」です。

つまり、おっぱいの勢いが強すぎて赤ちゃんが自分のペースで飲めない時にむせるのです。

逆に、「おっぱいが噴射せずに赤ちゃんの口の中にゆっくりと流れ込む」と赤ちゃんは自分のペースで飲めるのでむせません。

大人の私たちで例えて言うと、

「ペットボトルの口から水やお茶が噴射して出る」と大人の私たちでもビックリしますし、むせるでしょう。

やはり飲み物は自分のペースで飲みたいですよね。

むせないように授乳するには?



授乳前に指で搾乳して母乳を少し捨てると良いです。

どのくらい搾乳すると良いかと言うと、

「乳輪部が少し柔らかくなるくらい」です。

搾乳すると母乳がすぐに噴き出すようでしたら、「噴き出すのが少し落ち着くくらい」です。

搾乳する事によって、おっぱいが噴射せずゆっくりと出るようになりやすいので、赤ちゃんは自分のペースで飲みやすくなります。

母乳不足かな?と悩んでおられるママにとっては、「捨てるなんてもったいない。」と思われるかもしれません。

その場合は哺乳瓶に搾乳して、授乳した後に飲ませると良いですね。

★搾乳する時の注意点があります。

それは「力を入れすぎないこと」です。

痛みを感じるほど力を入れると、乳輪部が腫れてしまうことがあります。

また、母乳が出過ぎる方の場合は「ゆっくりとしたスピードで搾乳すること」です。

早いスピードで搾乳すると、刺激が強すぎてよけいに分泌が増えてしまったり、乳房が張りすぎることがあります。

童謡「ゆりかごの歌」のテンポより少しゆっくりくらいです。

♪ゆりかごの歌をカナリヤが歌うよ。ねんねこねんねこねんねこよ。♪

授乳中に赤ちゃんが眠ってしまわないようにする

何故眠ってしまわない方が良いかと言うと、

赤ちゃんがママの乳首を吸うと、その刺激を受けて母乳が作られて出てきます。(射乳といいます)

赤ちゃんが起きている時は、母乳が出てきてもあまりむせずに飲みます。

けれども、ママの乳首をくわえてウトウト眠っている時の赤ちゃんは無防備です。急に口の中に母乳が流れ込んで来ると、すぐに飲み込む事が出来ない為むせるのです。

授乳中は出来るだけ眠ってしまわないようにした方が良いです。

その方法についてはこちらを参考になさって下さい。↓

謎の10分ずつ

赤ちゃんが飲みやすい抱き方も大事です

それは、「大きい口を開けやすい」「舌を前に出しやすい」「呼吸がしやすい」 抱き方です。

その方法についてはこちらを参考になさって下さい。↓

授乳の抱き方

むせた時はどうしたら良いの?

むせたら、赤ちゃんの身体を起こして縦抱きにしてゲップを出すときの体勢にしましょう。

ゲップが出ないときは、しばらく抱っこして赤ちゃんが落ち着いてきたら授乳を再開してみましょう。

以上の事をやってみても効果がない時は?

以上の事をやってみても、むせる・お腹の張り・いきみなどが改善しない場合は、稀に病気の事もありますので、小児科医師に相談してください。

乳腺炎症状がある時、どうしたら良いですか?

ここでは、乳腺炎症状がある時のご自身で出来る対処方法をお話します。

乳腺炎症状(おっぱいが痛くて熱がある)の時に心がける事

①水分を十分飲む
②授乳する
③患部を刺激しすぎない
④栄養をとる
⑤休養をとる


①水分を十分飲む

熱が高い時は水分を飲む事が大事です。
乳腺炎は乳房の一部が燃えているような状態とも言えます。
この火を消すには十分な量の水分が必要なのです。

ママの尿が普段よりも量や回数が少ない、色が濃い時は、水分が不足しています。
また、お肌がカサカサで乾燥している、髪の毛がパサパサしている、便が固くて出にくいなども水分不足の兆候と言えます。
水分が足りていないとなかなか解熱しませんので体力も消耗してしまいます。

「水分を飲みすぎるとおっぱいが張ってしまうのでは?」と心配される方もいらっしゃいますが、発熱している時は熱を下げる方に水分が使われるので、それほど乳房は張りません。

こまめに飲むようにしましょう。

もしも、吐き気があって飲めない場合は、少しずつでも飲むようにしてみて下さい。

また、お茶や紅茶は利尿作用があり尿に出てしまいますので、飲みすぎないようにしましょう。
お水や白湯の方が良いですが、そればっかりでは飽きてしまうので、お味噌汁やおうどんのお汁、スープなどでも良いです。

②授乳する

しんどい時は授乳は重労働ですが、赤ちゃんに飲んでもらった方が治りやすいです。
授乳回数は、おっぱいが痛い時はとても不安ですので、頻回に授乳される方が多いですが、頻回すぎると赤ちゃんはお腹が空いていないのであまり飲まない事もあります。
その場合は、赤ちゃんがお腹が空くまで待ってから授乳した方がしっかり飲んでくれやすいです。


授乳前・授乳中も水分を飲んで下さい。飲んだ方が母乳の流れが良くなりますので治りやすいです。
また、授乳間隔は大幅に開きすぎない方が良いです。開きすぎて乳房内に長時間母乳がたまる状態が続くと治りにくいです。
※授乳不可のお薬を飲んでおられる、又は何らかの理由で授乳しない方が良いと医師から指導を受けている方は、ご自身で搾乳してください。

③痛い部分を刺激しすぎない

おっぱいが痛くて硬い部分がある時に、その部分を手で押しながら授乳する方が多いです。
確かに、そうすることで痛みや硬さが軽減される事もあります。
けれども、力を入れすぎて痛みを感じるほど押してしまうと炎症が悪化する事もありますので、押しすぎないようにして下さい。
「乳腺炎」は「扁桃腺炎・中耳炎」などと同じ炎症の病気です。
扁桃腺炎や中耳炎になった時に喉や耳を強く押したりしませんよね。
そんな事をしたら余計に痛くなってしまいます。乳腺炎も同じです。

ですので、痛みを感じるほど力を入れないで手のひらで軽く押さえるくらいにしましょう。
「ゲンコツ」で押すママもいらっしゃいますが、刺激が強すぎてよけいに痛くなることが多いです。

④栄養を取る

乳腺炎症状をおこしやすい方の多くは栄養不足です。
妊娠前・妊娠中に貧血だった・お産のとき出血量が多かった・母乳量が多い・生理が再開している方は栄養が不足している事があります。
「朝食なし、昼食は菓子パンだけ」
「食べると乳房が張って痛くなるから我慢して食べないようにしている。」
「ご飯と野菜中心の食事をしている。」
「産後太りを解消したいから食べるのを我慢している。」
というような方は乳腺炎になりやすいように思います。

お米や野菜だけでなく、十分な量のお肉・魚介類・大豆・卵(←アレルギーがある場合は避けて下さい)などのタンパク質を食べた方が、乳腺炎症状を改善する力がつきやすくなります。
家族のためだけでなく、ご自身にも栄養のあるお食事を用意してあげてくださいね。
料理する余裕がない場合は誰かに作ってもらうか、簡単にすぐに食べられる惣菜や缶詰とかサラダチキンとかを購入するなどされたらどうでしょうか?
しんどい時はあまり手作りにこだわらない方が良いと思います。
発熱していて食欲がない時は無理に食べなくても良いですが、水分だけは十分に飲むようにしましょう。

甘いものは控えた方が治りやすいです。
でもなかなか我慢出来ないという方も多いですが、栄養をしっかりと取るようにすると甘いものへの欲求がおさまってきます。
甘いお菓子が欠かせなかった方でも、タンパク質などの栄養で身体が満たされてくると「それほど食べたくなくなった」という事は珍しくないです。
産後太りも解消しやすくなりますよ。

⑤休養をとる

乳腺炎症状をおこしやすい方の多くは、大変疲れておられます。
疲労がたまって身体の抵抗力が低下している時に乳腺炎になりやすいようです。
赤ちゃんのお世話や家事でとても忙しいとは思いますが、出来るだけ身体を休めるようにしましょう。
「自分がしないとしょうがない」と思っている事でも、思いきって周囲の人にお願いしてみてはどうでしょうか?
人は頼りにされると嬉しいものですよ。特に男性は。

⑥お薬のこと

高熱の場合は、病院で内服薬の処方や点滴をしてもらうと楽になりますが、受診がかなわなくてお薬を処方してもらえない場合は、漢方薬という選択肢もあります。
「葛根湯」はよく知られていますが、人によっては合わない事もあります。
薬剤師さんに今の貴方の状態に合ったお薬を相談して購入するようにしましょう。

「おっぱいが痛い」という事は、ほとんどの方にとって未知の体験です。
とても不安だと思います。
出来るだけ慌てずに落ち着いて、今の状態を観察し出来ることをやってみましょう。

母乳育児以外の悩み

私が抱っこすると泣くんです

このようなことは、2〜3ヶ月くらいまでの赤ちゃんによくみられます。
赤ちゃんはお母さんが誰かということはちゃんとわかっています。
わかっているからお母さんが抱くと泣くことがあるのです。

どういうことかと言うと、小さい赤ちゃんはお母さん以外の人に抱っこされたり、かまわれたりすると、「この人は誰かな?何かされるのかな?ちょっと怖いから今は黙っていた方が良さそうだぞ。」というふうに思って、緊張して身を硬くします。
この様子が大人の私たちからは、おとなしくしているように見えるのです。

(私たちでも自分より身体の大きな人に、いきなり大きな声で話しかけられたり抱きつかれたりしたら、ビックリしますし怖いですよね。身動き出来ずに固まってしまって声も出せない事もあるでしょう。)

実家や自宅などでお母さんが赤ちゃんを抱っこしても泣きやまない時に、夫や実母らが抱っこすると、とたんに泣きやむ事が多いです。
お母さんはその様子を見てショックを受けます。

そしてこう思います。「私の抱っこが嫌なのかな?実母や義母は育児経験があるし抱っこの仕方が上手だから?でも夫は抱っこは上手じゃないのに、何で?」「私のことお母さんって思っていないの?赤ちゃんを泣きやませられない私ってお母さん失格?」と思って深く落ち込みます。

でも、赤ちゃんはお母さんは誰かという事はちゃんと分かっています。だって、長い間お腹の中で、お母さんの匂い・お母さんの息遣い・お母さんの足音をお腹の中で感じ取っていたのですから。
赤ちゃんはお母さんの事が大好きです。一番安心出来る人なのです。 赤ちゃんは、お母さんに抱っこしてもらっていると安心して自分の気持ちを表現出来ます。
お母さんに対しては泣きたいときは思いきり泣けるのです。甘えてわがままが言えるのでしょうね。だから、落ち込まなくてもいいのです。

そして、この「お母さんが抱っこすると泣く」という事は、いつまでも続きません。
そのうち、「お母さんが抱っこすると泣きやむ」ようになります。
大人たちはそれを「人見知りが始まった」と言いますが、「人見知り」はもっと早い時期、生まれたての頃にすでにしているんですよ。

このことで悩んでいるお母さん方は多いです。私の相談室ではよく聞きます。
でもこのような悩みがあるという事はあまり知られていないようです。
それはなぜなのか?

こんなことで悩んでいるのは自分だけかなあと思ってしまったり、誰かにうちあけても「そんな事初めて聞いたわ」などと言われたら余計に落ちこんでしまうので、相談出来ないからかなと思います。

私の相談室にやって来る小さい赤ちゃんたちは最初のうちは私のことを警戒しているのかあまり泣きません。
でも、何回か来るうちに家と同じようによく泣くようになってくることが多いです。安心してくれているのかな?と思ってちょっと嬉しくなるんですよ。
だから、赤ちゃんに泣かれても気にせずに自信を持って抱っこしてくださいね。

泣かれるのがちょっとでもマシになる方法ってありますか?

お腹が空いている、オムツが濡れている、ウンチが出そうで出ない、お熱がある、暑いとか寒いとか などなど思いつく事柄について対応してみても効果がない場合は、「説明がなくて怒って泣いている」のかもしれません。

私たち大人は、赤ちゃんに「〇〇へお出かけするよ」などとあまり事前に説明しないですから、赤ちゃんは急にどこかに連れて行かれてびっくりします。
出かけている間は緊張しているのでじっとしていますが、夜になるとその事を思い出して泣く赤ちゃんは多いです。びっくりした事をママにわかって欲しくて泣いているようです。

では、どうしたら良いのかと言うと、来客があるとか検診に行くとかお宮参りに行くとか、実家に預けるとか、日常とは違うことがあって赤ちゃんが緊張するだろうなと思われる時は、そのことを前もって赤ちゃんに伝えたらいいのです。

例えば、「今日は1ヵ月検診に行くのですよ。検診は元気に育っているかどうかを診てもらうのよ。
裸にされてあっちこっち触られるけれど大丈夫よ。」とか「今日はお宮参りに行くのですよ。あなたが元気に大きくなるようにお願いするのよ。怖いところじゃないから大丈夫よ。」「ママは用事があって出かけるからおばあちゃんと待っててね。」「お客さんが来るのよ。ちょっと声が大きい人だからビックリするかもしれないけど良い人なのよ。」というふうにお話をしてあげれば良いのです。今日はどんな日なのかが分かっていれば赤ちゃんも安心です。
そして、帰ってきたら、赤ちゃんに「今日はちょっと疲れたね。」と一言ねぎらいの言葉をかけたらなお良いです。赤ちゃんは「お母さんはちゃんとボク(ワタシ)の気持ちを分かってくれているのだな。」と思うでしょう。

ところが何も言わずにいると、いきなりいろいろな出来事に遭遇して赤ちゃんはびっくりします。
そして夜になるとそのことを思いだして泣くのです。

私たち大人でも誰かに何の説明もなしに急に知らない所へ連れてゆかれたらびっくりしますし、行く前になぜ説明してくれないのかと思いますよね。

また、いきなり知らない人が家に来て「まあ、可愛いね」とか言って抱き上げられたりしたらびっくりを通り越して怖いです。
そして、そんな事があったにもかかわらず、何事もなかったかのようにひと言も説明がなかったら、「自分はこんな思いをしているのに!」と腹も立ちます。
赤ちゃんにも「説明」は大切なんですよ。赤ちゃんは言葉なんてわからないと思っている方は多いですが、そんなことはないです。ちゃんとわかっています。
わかっているということを表現出来ないだけです。
だから、面倒でもわかりやすく具体的にお話してあげましょう。

当院に来られているお母さん方も「今日はどこへ行くとか、何があるとかを言わないで出かけたりすると夜になると怒って泣きます。ちゃんと話をしないといけないんだなと思います。」とおっしゃいます。
このように、お話をするように心がけると「説明がなくて怒って泣く。」ということが減ります。

あと追いがひどくて困っています

あと追いがひどくて困っておられる方は多いです。落ち着いて用事も出来ないし預けられないので外出もままなりません。
「あと追い」は成長のひとつとも言われます。お母さんのことをちゃんと認識しているのでお母さんがいなくなったら不安だから後追いするのだと。
確かにそれはそうかもしれませんが、お母さんにとって「あと追い」はつらいものですね。そこで、「あと追い」を少しでも少なくするにはどうすれば良いのか考えてみましょう。
赤ちゃんにとってお母さんはかけがえのない存在です。
お母さんがいなくなると困ります。野生動物の赤ちゃんはお母さんとはぐれてしまうと多くの場合生きていけません。

赤ちゃんにとってお母さんはとても大切な人です。 だから気がつくとお母さんがいないという体験を何回もした赤ちゃんは、動けるようになるとお母さんを見失わないように後をついて行くのだと思います。

例えば何も言わずに赤ちゃんのそばから離れる、トイレに行くとか洗濯物を干しに行くとか、預けて出かけるとかすると、お母さんがいないことに気づいた赤ちゃんはとても不安になります。
このようなことが度重なると「お母さんのあとにくっついていれば安心」と思ってしまうのでしょう。 では、どうすれば良いのか?もうお分かりですね。
赤ちゃんのそばから離れる時はひと言伝えてから離れると良いです。「ちょっと洗濯もの干してくるからね。」とか「トイレに行ってくるね。」とか「用事があるから出かけるね。パパとお留守番しててね。」と伝えるのです。
そして赤ちゃんのそばに戻ったら「帰ってきましたよ。」と声をかけるのです。 「行って来ます」と「帰って来ました」をちゃんと言うことが大切です。

赤ちゃんは言葉なんて分からないと思っている人が多いですが、そんなことはないです。ちゃんと分かるのです。
当院ではよくこのような話をしていますので、新生児の頃から実践しているお母さん方は「あまり後追いをしないので助かっています。」とおっしゃる方もいらっしゃいます。 毎日の積み重ねは大事ですね。

もともとよくおしゃべりをするタイプのお母さんは無意識に赤ちゃんに話をしているようですが、無口なタイプの方はちょっと意識するようにしたら良いですね。

ママの悩みについての動画

私が抱っこすると赤ちゃん大泣き YouTube

ママが抱っこすると赤ちゃんが大泣きする事を説明する動画