私が抱っこしたら赤ちゃん大泣き

先日、相談室にいらっしゃったお母さんは、普通分娩の予定でしたが、急きょ、緊急帝王切開で出産となりました。赤ちゃんは状態が思わしくなく治療のため、お母さんと離れてNICUに入院しました。
直接授乳が出来ないため、お母さんは母乳を搾乳してNICUに運んでおられました。

2週間後、赤ちゃんが退院して直接授乳を試みたところ、哺乳瓶の乳首に慣れてしまったのか、お母さんのおっぱいを嫌がって大泣きするという状態が続きました。赤ちゃんに直接おっぱいを吸って欲しいという事で当院に来院されました。

乳房は、さほど深刻な状態ではなく、時間はかかるかもしれないけれど直接授乳は可能と思われました。自分で出来る乳房のケアや直接授乳の方法などについてお話しました。

帰り際に、お母さんが「実は、赤ちゃんが自分以外の人(実母・夫・親戚の人など)に抱っこされている時は泣かないのに、私が抱っこすると大泣きするんです。私のことをお母さんと認識していないのかと思って悲しくなります。 
帝王切開での出産だったし、直接授乳出来ていないし、母親らしい事をこの子に何一つしてやれていないし。」と涙を浮かべておっしゃいました。

私は、帝王切開だからとか、直接授乳が出来ないとかには関係なく、生まれて間もない赤ちゃんは「お母さん以外の人に抱かれると大人しくて、お母さんに抱かれると泣く事があるんですよ。そのような事で心を痛めているのはあなただけではないんですよ。」と言いました。

このようなことは、2〜3ヶ月くらいまでの赤ちゃんによくみられます。赤ちゃんはお母さんが誰かということはちゃんとわかっています。わかっているからお母さんが抱くと泣くことがあるのです。

どういうことかと言うと、小さい赤ちゃんはお母さん以外の人に抱っこされたり、かまわれたりすると、「この人は誰かな?何かされるのかな?ちょっと怖いから今は黙っていた方が良さそうだぞ。」というふうに思って、緊張して身を硬くします。この様子が大人の私たちからは、おとなしくしているように見えるのです。(私たちでも自分より身体の大きな人に、いきなり大きな声で話しかけられたり抱きつかれたりしたら、ビックリしますし怖いですよね。身動き出来ずに固まってしまって声も出せない事もあるでしょう。)

実家や自宅などでお母さんが赤ちゃんを抱っこしても泣きやまない時に、夫や実母らが抱っこすると、とたんに泣きやむ事が多いです。
お母さんはその様子を見てショックを受けます。 そしてこう思います。
「私の抱っこが嫌なのかな?実母や義母は育児経験があるし抱っこの仕方が上手だから?でも夫は抱っこは上手じゃないのに、何で?」
「私のことお母さんって思っていないの?赤ちゃんを泣きやませられない私ってお母さん失格?」と思って深く落ち込みます。

でも、赤ちゃんはお母さんは誰かという事はちゃんと分かっています。だって、長い間お腹の中で、お母さんの匂い・お母さんの息遣い・お母さんの足音をお腹の中で感じ取っていたのですから。

赤ちゃんはお母さんの事が大好きです。一番安心出来る人なのです。赤ちゃんは、お母さんに抱っこしてもらっていると安心して自分の気持ちを表現出来ます。お母さんに対しては泣きたいときは思いきり泣けるのです。甘えてわがままが言えるのでしょうね。だから、落ち込まなくてもいいのです。

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そして、この「お母さんが抱っこすると泣く」という事は、いつまでも続きません。
そのうち、「お母さんが抱っこすると泣きやむ」ようになります。 大人たちはそれを「人見知りが始まった」と言いますが、「人見知り」はもっと早い時期、生まれたての頃にすでにしているんですよ。

このことで悩んでいるお母さん方は多いです。私の相談室ではよく聞きます。 でもこのような悩みがあるという事はあまり知られていないようです。 
それはなぜなのか?
こんなことで悩んでいるのは自分だけかなあと思ってしまったり、誰かにうちあけても「そんな事初めて聞いたわ」などと言われたら余計に落ちこんでしまうので、相談出来ないからかなと思います。

私の相談室にやって来る小さい赤ちゃんたちは最初のうちは私のことを警戒しているのかあまり泣きません。でも、何回か来るうちに家と同じようによく泣くようになってくることが多いです。安心してくれているのかな?と思ってちょっと嬉しくなるんですよ。

だから、赤ちゃんに泣かれても気にせずに自信を持って抱っこしてくださいね。

☆このブログの文章を動画にしています。↓↓↓
https://youtu.be/s1dD0BRV37w
ご興味のある方はどうぞご覧ください。

乳房を押しながら授乳する?

おっぱいが詰まってシコリが出来たり、乳腺炎になった時などに、乳房のシコリの部分を強く押したり、揉んだり、しごいたりしながら授乳しているという方はよくいらっしゃいます。

確かにシコリの部分を押す事で溜まっている母乳を飲んでくれて、シコリが小さくなる事もありますが、力を入れすぎると乳腺を傷めてしまい炎症が増強されて乳腺炎を悪化させる事が多いです。強く押しすぎて青あざが出来ている方もいらっしゃいます。

シコリや乳腺炎で痛い時はとても不安になりますので、ついつい力を入れてしまいがちですが、乳房は女性の身体の中でも特に敏感なところでデリケートなので、そっと手を当てて軽く押さえる程度にしましょう。お肌のお手入れをする時のような手つきで優しく扱うことが大切です。お顔は揉んだり、しごいたりしないですよね。そんな事をしたらシワが出来てタルミそうですし。

シコリの部分を押すよりも、乳房を下方から(アンダーバストのところ)を手のひらで軽く持ち上げながら授乳すると、赤ちゃんはお口に乳房の重みがかからなくなって飲みやすくなるためシコリが取れやすいように思います。
この時も力いっぱい持ち上げないようにしましょう。くれぐれも優しくしてくださいね。

おっぱいトラブルと食事について

母乳育児をしていると、「おっぱいのトラブル」に遭遇することがあります。

おっぱいの先の痛み、乳房にシコリが出来て痛い、乳房が痛いなど。

とても辛い事です。
そんなトラブルの原因は何でしょうか?

多くのママたちは食べたものが悪かったと思っていらっしゃるようです。

「〇〇を食べたから乳腺炎になった。〇〇を食べたから白斑が出来た。」などなど。

確かに食べ物が原因の事もありますが、トラブルの原因は「授乳」にもあります。

「おっぱいの先に負担をかけるような授乳をしている」と乳房トラブルになりやすいのです。

負担のかかる授乳にはいくつかあります。
そのひとつが「吸わせすぎ」です。

今日はその「吸わせすぎ」についてお話します。

「吸わせすぎ」には、

「長い時間吸わせ続ける」

「頻回に吸わせる」

などがあります。

ママたちはおっぱいは吸わせれば吸わせるほど、おっぱいの出るところ(排乳口)の開通が良くなると思っていらっしゃるようですが、限度を超えると全く逆の結果になる事があります。

吸わせすぎる事によって、おっぱいの出る排乳口周辺が傷んでしまい、排乳口が狭く細くなり詰まりやすくなります。場合によっては白斑が出来る事もあります。

そうなってしまうと、ちょっと甘いものなどを食べすぎただけで排乳口が詰まってしまい、出られなくなった母乳が乳房内に残って「シコリ」などのトラブルを起こしやすくなります。

長い時間吸わせる、頻回に吸わせるなどをしすぎない事で、それほど食事を我慢しなくてもトラブルを起こしにくくすることが出来るのです。

私は開業してから授乳中の食事についてママたちに細かくお話ししていました。

けれども、食事を頑張って我慢していてもトラブルを繰り返すママたちは多かったですし、食べられないということはとても辛い事でありストレスにもなっているようでした。

そんなママたちを見て、「食べたいものを食べてもおっぱいトラブルを避ける方法はないのか?」を考えてきました。

当院にいらっしゃった多くのママたちに協力してもらい試行錯誤の結果、「おっぱいの先に負担のかからない授乳」をすることで、おっぱいトラブルをある程度防ぐ事ができるとわかりました。

やみくもに食事を制限するだけでは、トラブルが解消されないだけでなく、ストレスもたまってしまいます。栄養不足となってトラブルを繰り返したり長引いたりする事もあります。

授乳は毎日何回もする事です。

毎日何回もすることはそのやり方が大切です。

例えば、姿勢・歩き方が健康に影響を及ぼすように。

おっぱいの先に負担のかからない授乳をすればトラブルが防げるだけでなく身体にも気持ちにも良い影響があります。

過度の食事制限をしなくても楽しい母乳育児が可能となるのです。

赤ちゃんがおっぱいを吸えない

赤ちゃんが、ママのおっぱいをうまく吸えないという事で来院される方は多いです。以前からこのような相談はありましたが、最近増えているように感じます。
先日も吸えなくて困ってらっしゃるママが来院されました。赤ちゃんは生後1ヶ月。出産したところでは、「赤ちゃんのお口が小さいからかな?」「お口が大きくなるまでは吸いつけるのは難しいかも?」「ママのおっぱいの先が出ていないので吸いにいのかな?」と言われていたそうで、哺乳びんの乳首をおっぱいの先につけて飲ませて、その後に母乳を搾乳して哺乳瓶で飲ませていらっしゃいました。授乳にものすごく時間がかかって、ほとんど眠っていないとのこと。とても疲れておられる様子でした。
おっぱいを見てみると先が硬くなっています。どのように搾乳しているのかと尋ねると、「赤ちゃんに少しでも母乳を飲ませたいので、一生懸命搾乳していました。うまく搾乳出来ないので、痛いのを我慢して思いきり力を入れて搾乳していました。」と。力を入れすぎて搾乳をすると乳輪部が腫れて硬くなります。硬くなってしまうと余計に赤ちゃんが吸いにくくなります。
力を入れなくてもできる搾乳方法をお伝えし、赤ちゃんが飲みやすい抱っこをしていただいて授乳を試みたところ、上手に飲むことが出来ました。
この方の場合、乳輪部が硬くなるような搾乳をしていた事と授乳の抱っこが赤ちゃんにとってちょっと吸いにくくなっていた事が原因でした。
ママのおっぱいにも赤ちゃんのお口にも、何の問題もありません。
当院にはこのような方がよくお見えになります。
おっぱいの扱い方、搾乳のちょっとしたコツなどを知っていると「しなくても良い苦労」をしなくてもすむのです。
扱い方やコツはそんなに難しいことではありません。
当院にいらっしゃらなくても、困っておられる方々にそれを伝える方法をただ今模索中です。

暑い夏は水分摂取

まだ7月なのに38度前後の気温が続いています。まだまだ暑い日が続きそうでげんなりしますね。8月はどんな事になるんでしょうか?
さて、暑い季節になってから、授乳の時に赤ちゃんが怒る・泣き出すなどで「母乳の出が悪いのでは?」と心配されて来院される方が多いです。
その原因の多くはお母さんの水分不足です。水分の摂取量が少ないと母乳量も少なくなります。
出産前にお仕事をしておられた方は、仕事中に水分補給がままならない職場環境だった方も多いです。長年そのような生活をされていると、水分を取らなくても大丈夫な「省エネモード」のようになっていらっしゃるのではないかと思います。「喉が渇いている」という事に気づきにくくなるのです。
そんなママたちも心がけて水分を取るようにすると、「喉が渇いているのが分かるようになった。」「飲みたいと思うようになった。」とおっしゃいます。
水分は授乳後に取るという方が多いですが、授乳前に飲んでおくと、射乳反射(母乳が湧いてくる)が起きやすくなります。授乳中も左右のおっぱいを交代する時に飲むようにすると、射乳が再度起きやすくなります。赤ちゃんも一度にたっぷりの量の母乳を飲めるようになると言うわけです。また、当院に来られている方はよくストローを使ってらっしゃいます。ストローだと赤ちゃんの顔を見ながら飲めますね。赤ちゃんも一度にたっぷりの量の母乳を飲めるようになると言うわけです。
また、暑い夏は、熱中症を予防するためにも水分補給を心がけましょう。