赤ちゃんの口に乳輪が全部入らないとダメ?

「乳輪が全部赤ちゃんの口に入るように授乳しないといけない。」
「赤ちゃんの口から乳輪がはみ出ているから、『浅吸い』でちゃんと飲めていない。」
と思ってらっしゃるママさんは多いですが、乳輪全部を赤ちゃんの口に入れる必要はありませんし、入れようとしない方が良いです。

その理由は?

当たり前の事ですが、乳輪の大きさは個人差があります。

その直径は2㎝位から10㎝位とかなり幅があります。

赤ちゃんの口は小さいので、2~3㎝位の乳輪なら赤ちゃんのお口に入るでしょうが、それ以上の大きさならはみ出て当然です。

乳輪全部を赤ちゃんの口に入れようとする必要はないです。

乳輪部を全部赤ちゃんの口に入れようとすると、赤ちゃんの頭を押さえすぎてしまいがちです。

そうすると、赤ちゃんは下を向いてしまう(うつむいてしまう)ため口を大きく開けられません。

その結果、乳首の先を吸うようになります。

そのため授乳中に乳首が痛くなったり、白斑・亀裂・水疱などの乳首トラブルの原因になることが多いです。

また、赤ちゃんの鼻にママの乳房がくっついてしまって息がしにくくなるため、嫌がって吸い付かなくなる事もあります。

「おっぱいを吸うのを嫌がる」原因の一つです。

赤ちゃんの頭を押さえすぎないようにして顔を仰向けるようにするだけで、嫌がらずに飲める事が多いです。

具体的な授乳の方法についてはこちらをご参照ください。

「乳輪全部を赤ちゃんの口に入れようとする」よりも大事なことは?

授乳前に飲みやすい乳輪にしておくこと

乳輪が硬いまま授乳しようとすると、赤ちゃんの舌が滑ってしまうため乳首の先を吸いがちになります。

先を吸われると大変痛いですし、乳首トラブルを引き起こす事もあります。

授乳前に乳輪が硬い時は、ご自身の指で柔らかくなるくらい搾乳すると良いです。

「母乳の出が少ないから搾乳するなんてもったいない」と思うママもいらっしゃるでしょう。

けれども、搾乳して乳輪が柔らかくなった方が飲める量が増えやすいですので少しでも搾乳した方が良いです。

私は、長年この仕事をしておりますが、
「赤ちゃんの口から乳輪がはみ出てる。」事を気にしてらっしゃる方は、最近特に多くなったように思います。

ママたちに「何故、そう思うの?」と聞くと、「出産したところや友人から聞いた、ネットでもそのように書いてあった。」とおっしゃいます。

今は、周囲の人々からの様々なアドバイスだけでなく、ネットで調べれば沢山の情報を得る事が出来る世の中です。
何を選べば良いのか迷われる事も多いでしょう。

大事な事は、いろいろなアドバイスや情報が、自分と自分の赤ちゃんに合うのかどうかを「考える」事と「感じる」事だと思います。

ネットや本に書いてあっても、私たち助産師から聞いた事であっても、アドバイスどおりにやってみて

「しっくりこない時」は、ご自身と赤ちゃんに合うような方法を工夫してみる。
そのようにしていると、次第に応用する力がついてきますので、赤ちゃんや乳房の変化にも対応出来るようになってきます。
自信もついてくることでしょう。

もちろん、どのようにしたら良いのか分からない、工夫してみても上手くいかない、これで良いのかどうか不安な時などは、ネットで調べるのも一つの方法だけれど、私たち助産師を頼って下さいね。

参考になれば幸いです。

↓上記の内容をまとめたYouTube動画です。どうぞご覧ください。

https://youtu.be/piTeAWjqRc4

乳首トラブルにラップは貼らないで!

当院では母乳分泌不足だけではなく、乳房のトラブルや乳首のトラブルなどでも来院されます。
乳首トラブルは白斑や乳頭亀裂、水泡などですが、来院される方の多くはワセリン・馬油・ランシノーなどの保湿剤を塗ってラップを貼っておられます。

「乳首の先が痛くて授乳が辛いです。薬を塗ってラップを貼っていますが、なかなか治りません。どうすれば治りますか?」といった相談が多いです。

傷にワセリンなどの保湿剤を塗りラップなどを貼って傷の治癒を促す療法はあります。
あまり重症ではない傷や火傷などに効果がありますが、乳首の傷などには適しません。

なぜかというと皮膚が違うからです。

乳首の皮膚と手足や背中・腹部の皮膚との大きな違いは「乳首の皮膚は排乳口という母乳が出る穴が開いている皮膚である」ということです。

母乳は赤ちゃんが飲んでいない時も分泌されますので、ラップを貼ってしまうと母乳が外に排出されなくなりラップの中に長時間とどまります。
母乳は糖質をたっぷり含んでいて栄養豊富ですので、雑菌のエサになってしまうために傷が治りにくいと考えられます。

当院では、乳首のトラブルで来院された方に次のようにお伝えしております。

①傷から浸出液(汁)が出ている場合

保湿剤を薄く塗ってガーゼなどを貼りブラジャーなどをつける

②傷から浸出液(汁)が出ていない場合

保湿剤を薄く塗ってブラジャーなどをつける

「薄く塗る」理由は、たっぷり塗ると母乳の排出を妨げやすくなるからです。

また、乳首の傷を治すには保湿剤を塗るだけではなくて、

授乳方法を見直す事がとても大切です。

例えば、乳首や乳輪部が硬いままで授乳すると赤ちゃんは乳首の先っぽをくわえてしまいがちです。
乳首の先っぽを吸われると大変痛いだけでなく乳首のトラブルは治りにくくなります。

どうすれば良いかと言うと、授乳前に手で搾乳すると良いです。

搾乳すると乳首の先と乳輪部が柔らかくなりますので赤ちゃんは深くくわえやすいです。深くくわえた方が痛くないですし乳首トラブルは治りやすいです。

また、授乳の抱き方と飲ませる時間 (左右の乳房の交代のタイミング)
もとても重要です。

以上のように、乳首にトラブルのある時は、保湿剤を薄く塗ってラップを貼らないで授乳方法を見直すことで治りやすくなります。

※1) 授乳の抱き方についてはこちらをご参照ください。

※2) 飲ませる時間(左右乳房の交代のタイミング)についてはこちらをご参照ください。

手での搾乳方法についてはまたお話しますね。

 

井田助産院サイト
https://www.ida-josanin.com/

井田助産院 Facebookページ
https://www.facebook.com/ida.josanin/

井田助産院Instagram
https://www.instagram.com/?hl=ja

乳房ケアの痛み

先日、母乳育児相談にいらしたママさんは農業高校を卒業された方で、酪農の実習について興味深いお話を聞かせていただきました。

乳牛の搾乳実習では、まず手で搾乳して張っている乳房を柔らかくしてから搾乳器をつけるとの事。

手で行う搾乳は力を入れすぎて痛くしてしまうと牛に蹴られる事もあるそうです。
牛は自分の身を守るために、痛みを感じたら搾乳している人を蹴ってやめさせるのですね。

実習生は蹴られたら痛いし怖いから力の入れ具合を自分で工夫して、その牛にちょうど良い加減の搾乳方法を覚えてゆくのでしょう。
牛に教わるんだなって思いました。

人間のお母さんは、乳房のケア(乳房マッサージ等)が痛い時は「痛いです」とおっしゃいます。
けれども、痛くても言えない方も多いのではないかと思います。

「痛い」って言ったら怒られそうだから「痛い」とは言えないとか、
親切に一生懸命して下さっているから「痛い」とは言えないとか、
このくらいの「痛み」は普通なんだ、自分も我慢しなきゃとか。

でも、「痛い」ときは我慢せずに「痛い」とおっしゃってください。
乳管に詰まった乳栓を取り除く時などは痛いこともありますが、乳房のためには出来るだけ「痛いこと」は避けた方が良いです。

また、「痛い」だけでなく「手が重く感じる」「つかまれている感じがする」など、気づいた事を教えていただければ、こちらも大変勉強になりますし技術の向上につなげていけます。

言いにくいかとは思いますが。。。
どうしても言えない時は、
言えない時は、









蹴る…? !