最近、当院では乳腺炎症状で来院される方が多くなってきました。
コロナ禍の今、乳腺炎で病医院を受診しようとしても、発熱していると断られる事が多い事も影響しているのでしょう。
今回は、乳腺炎症状がある時のご自身で出来る対処方法をお話します。
乳腺炎症状(おっぱいが痛くて熱がある)の時に心がける事
①水分を十分飲む。
②授乳する。
③患部を刺激しすぎない。
④栄養をとる。
①水分を十分飲む
熱が高い時は水分を飲む事が大事です。
乳腺炎は乳房の一部が燃えているような状態とも言えます。
この火を消すには十分な量の水分が必要なのです。
水分量が足りているかどうかは、お母様ご自身の尿の状態が一つの目安になります。
普段よりも量や回数が少ない、色が濃い時は、水分が不足しています。
また、お肌がカサカサで乾燥している、髪の毛がパサパサしている、便が固くて出にくいなども水分不足の兆候と言えます。
水分が足りていないとなかなか解熱しませんので体力も消耗してしまいます。
「水分を飲みすぎるとおっぱいが張ってしまうのでは?」と心配される方もいらっしゃいますが、発熱している時は熱を下げる方に水分が使われるので、それほど乳房は張りません。
こまめに飲むようにしましょう。
もしも、吐き気があって飲めない場合は、少しずつでも飲むようにしてみて下さい。
また、お茶や紅茶は利尿作用があり尿に出てしまいますので、飲みすぎないようにしましょう。
お水や白湯の方が良いですが、そればっかりでは飽きてしまうので、お味噌汁やおうどんのお汁、スープなどでも良いです。
②授乳する
しんどい時は授乳は重労働ですが、赤ちゃんに飲んでもらった方が治りやすいです。
授乳回数は、おっぱいが痛い時はとても不安ですので、頻回に授乳される方が多いですが、頻回すぎると赤ちゃんはお腹が空いていないのであまり飲まない事もあります。
その場合は、赤ちゃんがお腹が空くまで待ってから授乳した方がしっかり飲んでくれやすいです。
授乳前・授乳中も水分を飲んで下さい。飲んだ方が母乳の流れが良くなりますので治りやすいです。
また、授乳間隔は大幅に開きすぎない方が良いです。開きすぎて乳房内に長時間母乳がたまる状態が続くと治りにくいです。
※授乳不可のお薬を飲んでおられる、又は何らかの理由で授乳しない方が良いと医師から指導を受けている方は、ご自身で搾乳してください。
③痛い部分を刺激しすぎない
おっぱいが痛くて硬い部分がある時に、その部分を手で押しながら授乳する方が多いです。
確かに、そうすることで痛みや硬さが軽減される事もあります。
けれども、力を入れすぎて痛みを感じるほど押してしまうと炎症が悪化する事もありますので、押しすぎないようにして下さい。
「乳腺炎」は「扁桃腺炎・中耳炎」などと同じ炎症の病気です。
扁桃腺炎や中耳炎になった時に喉や耳を強く押したりしませんよね。
そんな事をしたら余計に痛くなってしまいます。乳腺炎も同じです。
ですので、痛みを感じるほど力を入れないで手のひらで軽く押さえるくらいにしましょう。
「ゲンコツ」で押すママもいらっしゃいますが、刺激が強すぎてよけいに痛くなることが多いです。
④栄養を取る
乳腺炎症状をおこしやすい方の多くは栄養不足です。
妊娠前・妊娠中に貧血だった・お産のとき出血量が多かった・母乳量が多い方は栄養が不足している事があります。
「朝食なし、昼食は菓子パンだけ」
「食べると乳房が張って痛くなるから我慢して食べないようにしている。」
「ご飯と野菜中心の食事をしている。」
「産後太りを解消したいから食べるのを我慢している。」
というような方は乳腺炎になりやすいように思います。
お米や野菜だけでなく、十分な量のお肉・魚介類・大豆・卵(←アレルギーがある場合は避けて下さい)などのタンパク質を食べた方が、乳腺炎症状を改善する力がつきやすくなります。
家族のためだけでなく、ご自身にも栄養のあるお食事を用意してあげてくださいね。
料理する余裕がない場合は誰かに作ってもらうか、簡単にすぐに食べられる惣菜や缶詰とかサラダチキンとかを購入するなどされたらどうでしょうか?
しんどい時はあまり手作りにこだわらない方が良いと思います。
発熱していて食欲がない時は無理に食べなくても良いですが、水分だけは十分に飲むようにしましょう。
甘いものは控えた方が治りやすいです。
でもなかなか我慢出来ないという方も多いですが、栄養をしっかりと取るようにすると甘いものへの欲求がおさまってきます。
甘いお菓子が欠かせなかった方でも、タンパク質などの栄養で身体が満たされてくると「それほど食べたくなくなった」という事は珍しくないです。
産後太りも解消しやすくなりますよ。
⑤休養を取る
乳腺炎症状をおこしやすい方の多くは、大変疲れておられます。
疲労がたまって身体の抵抗力が低下している時に乳腺炎になりやすいようです。
赤ちゃんのお世話や家事でとても忙しいとは思いますが、出来るだけ身体を休めるようにしましょう。
「自分がしないとしょうがない」と思っている事でも、思いきって周囲の人にお願いしてみてはどうでしょうか?
人は頼りにされると嬉しいものですよ。特に男性は。
⑥お薬のこと
高熱の場合は、病院で内服薬の処方や点滴をしてもらうと楽になりますが、受診がかなわなくてお薬を処方してもらえない場合は、漢方薬という選択肢もあります。
「葛根湯」はよく知られていますが、人によっては合わない事もありますので、出来れば漢方専門の薬局で薬剤師さんに相談して、貴方の状態に合ったお薬を試してみるのも良いでしょう。
「おっぱいが痛い」という事は、ほとんどの方にとって未知の体験です。
とても不安だと思います。
出来るだけ慌てずに落ち着いて、今の状態を観察し出来ることをやってみましょう。
参考になれば幸いです。
授乳の抱き方や授乳のコツなどは当院ホームページ「ママの悩みQ&A」に書いております。興味のある方はどうぞご覧になってください。