当院でお受けする母乳育児相談で、授乳中の乳首の痛みに関する事は、とても多いです。
「乳首の痛み」の原因は「白斑」「乳栓」「咬み傷」などいろいろあります。
原因によってその対処方法も変わってきます
※最も多いトラブルの一つの「白斑」についてはこちらをご覧になって下さい。
今回は、
赤ちゃんに授乳している時に
「乳首が噛まれている感じがして痛い」
「乳首をはさまれている感じがして痛い」
などの原因と対処方法についてお話します。
このような授乳中の痛みで困っておられるママの
「乳首の上のつけ根」
を拝見しますと、少し赤くなっていたり、線状の細い傷がついている事が多いです。
「ここは痛いですか?」とその部分を指で軽く押すと「痛いです!」とおっしゃいます。
「乳首の上のつけ根」に傷が出来る主な原因は、授乳中の赤ちゃんの抱き方にあります。
どのような抱き方かと言うと「 赤ちゃんのお顔がうつむいてしまう」ような抱き方です。
赤ちゃんのお顔がうつむいてしまうと、
ママの「乳首の上のつけ根」に赤ちゃんの歯茎が当たります。
また、お顔がうつむくと
顎が引けてしまいますので、舌を前に出しづらくなりますし、口も大きく開けられませんから乳首の先しか吸えません。
歯茎が当たった状態で、乳首の先を吸われると「乳首の上のつけ根」に常に強い力が加わります。
このような授乳が何回も繰り返されることで痛みは増していくだけでなく、やがて傷が出来てしまいます。
この傷が深くなって、パックリと割れてしまったり化膿する事もあります。
では、そうならないようにするには、どうすれば良いのでしょうか?
授乳の時、赤ちゃんのお顔をあお向けるように抱っこします。
コツとしては、赤ちゃんの後頭部に手を当てるというよりも、赤ちゃんの後頭部と肩甲骨の間くらいに手を当てて乳房に引き寄せるようにすると、赤ちゃんの顔は上を向きやすくなります。
その際に下記のイラストのように、ご自身の親指の位置を意識してみると良いでしょう。
赤ちゃんの鼻とママの乳房の間に小指一本分くらいの隙間を作るようにすると良いです
こうすると、赤ちゃんの歯茎はママの乳首の上のつけ根に当たらないですし、赤ちゃんのあごは引けてしまわないので、口を大きく開けられます。
舌もしっかりと前に出せますから、深くくわえられるので痛みもなく傷も出来にくくなります。
私たちも飲み物を飲む時はちょっと上を向きますよね。
うつむきながら飲み物を飲んでいる人はあまり見かけません。
また、上を向いた方が口も大きく開けられます。
当院に来院されるママたちの授乳の様子を拝見していますと、
10年ほど前から
「ご自身のお腹と赤ちゃんのお腹を密着させるように抱いて授乳する」方が多くなったなと感じます。
たぶん、赤ちゃんに乳首を深くくわえてもらうためなのでしょう。
けれども、ママと赤ちゃんのお腹が密着しすぎると、赤ちゃんのお顔がうつむきがちになって乳首のつけ根に赤ちゃんの歯茎が当たってしまう事が多いです。
ですので、
「赤ちゃんに深くくわえさせる」事よりも、
「赤ちゃんが大きな口を開けやすいように」という事を意識してみてはどうでしょうか?
参考になれば幸いです。
授乳の抱っこ方法については下記もご参照下さい。
授乳の抱っこ方法