乳房ケアの痛み

先日、母乳育児相談にいらしたママさんは農業高校を卒業された方で、酪農の実習について興味深いお話を聞かせていただきました。

乳牛の搾乳実習では、まず手で搾乳して張っている乳房を柔らかくしてから搾乳器をつけるとの事。

手で行う搾乳は力を入れすぎて痛くしてしまうと牛に蹴られる事もあるそうです。
牛は自分の身を守るために、痛みを感じたら搾乳している人を蹴ってやめさせるのですね。

実習生は蹴られたら痛いし怖いから力の入れ具合を自分で工夫して、その牛にちょうど良い加減の搾乳方法を覚えてゆくのでしょう。
牛に教わるんだなって思いました。

人間のお母さんは、乳房のケア(乳房マッサージ等)が痛い時は「痛いです」とおっしゃいます。
けれども、痛くても言えない方も多いのではないかと思います。

「痛い」って言ったら怒られそうだから「痛い」とは言えないとか、
親切に一生懸命して下さっているから「痛い」とは言えないとか、
このくらいの「痛み」は普通なんだ、自分も我慢しなきゃとか。

でも、「痛い」ときは我慢せずに「痛い」とおっしゃってください。
乳管に詰まった乳栓を取り除く時などは痛いこともありますが、乳房のためには出来るだけ「痛いこと」は避けた方が良いです。

また、「痛い」だけでなく「手が重く感じる」「つかまれている感じがする」など、気づいた事を教えていただければ、こちらも大変勉強になりますし技術の向上につなげていけます。

言いにくいかとは思いますが。。。
どうしても言えない時は、
言えない時は、









蹴る…? !


乳房を押しながら授乳する?

おっぱいが詰まってシコリが出来たり、乳腺炎になった時などに、乳房のシコリの部分を強く押したり、揉んだり、しごいたりしながら授乳しているという方はよくいらっしゃいます。

確かにシコリの部分を押す事で溜まっている母乳を飲んでくれて、シコリが小さくなる事もありますが、力を入れすぎると乳腺を傷めてしまい炎症が増強されて乳腺炎を悪化させる事が多いです。強く押しすぎて青あざが出来ている方もいらっしゃいます。

シコリや乳腺炎で痛い時はとても不安になりますので、ついつい力を入れてしまいがちですが、乳房は女性の身体の中でも特に敏感なところでデリケートなので、そっと手を当てて軽く押さえる程度にしましょう。お肌のお手入れをする時のような手つきで優しく扱うことが大切です。お顔は揉んだり、しごいたりしないですよね。そんな事をしたらシワが出来てタルミそうですし。

シコリの部分を押すよりも、乳房を下方から(アンダーバストのところ)を手のひらで軽く持ち上げながら授乳すると、赤ちゃんはお口に乳房の重みがかからなくなって飲みやすくなるためシコリが取れやすいように思います。
この時も力いっぱい持ち上げないようにしましょう。くれぐれも優しくしてくださいね。

おっぱいトラブルと食事について

母乳育児をしていると、「おっぱいのトラブル」に遭遇することがあります。

おっぱいの先の痛み、乳房にシコリが出来て痛い、乳房が痛いなど。

とても辛い事です。
そんなトラブルの原因は何でしょうか?

多くのママたちは食べたものが悪かったと思っていらっしゃるようです。

「〇〇を食べたから乳腺炎になった。〇〇を食べたから白斑が出来た。」などなど。

確かに食べ物が原因の事もありますが、トラブルの原因は「授乳」にもあります。

「おっぱいの先に負担をかけるような授乳をしている」と乳房トラブルになりやすいのです。

負担のかかる授乳にはいくつかあります。
そのひとつが「吸わせすぎ」です。

今日はその「吸わせすぎ」についてお話します。

「吸わせすぎ」には、

「長い時間吸わせ続ける」

「頻回に吸わせる」

などがあります。

ママたちはおっぱいは吸わせれば吸わせるほど、おっぱいの出るところ(排乳口)の開通が良くなると思っていらっしゃるようですが、限度を超えると全く逆の結果になる事があります。

吸わせすぎる事によって、おっぱいの出る排乳口周辺が傷んでしまい、排乳口が狭く細くなり詰まりやすくなります。場合によっては白斑が出来る事もあります。

そうなってしまうと、ちょっと甘いものなどを食べすぎただけで排乳口が詰まってしまい、出られなくなった母乳が乳房内に残って「シコリ」などのトラブルを起こしやすくなります。

長い時間吸わせる、頻回に吸わせるなどをしすぎない事で、それほど食事を我慢しなくてもトラブルを起こしにくくすることが出来るのです。

私は開業してから授乳中の食事についてママたちに細かくお話ししていました。

けれども、食事を頑張って我慢していてもトラブルを繰り返すママたちは多かったですし、食べられないということはとても辛い事でありストレスにもなっているようでした。

そんなママたちを見て、「食べたいものを食べてもおっぱいトラブルを避ける方法はないのか?」を考えてきました。

当院にいらっしゃった多くのママたちに協力してもらい試行錯誤の結果、「おっぱいの先に負担のかからない授乳」をすることで、おっぱいトラブルをある程度防ぐ事ができるとわかりました。

やみくもに食事を制限するだけでは、トラブルが解消されないだけでなく、ストレスもたまってしまいます。栄養不足となってトラブルを繰り返したり長引いたりする事もあります。

授乳は毎日何回もする事です。

毎日何回もすることはそのやり方が大切です。

例えば、姿勢・歩き方が健康に影響を及ぼすように。

おっぱいの先に負担のかからない授乳をすればトラブルが防げるだけでなく身体にも気持ちにも良い影響があります。

過度の食事制限をしなくても楽しい母乳育児が可能となるのです。

赤ちゃんがおっぱいを吸えない

赤ちゃんが、ママのおっぱいをうまく吸えないという事で来院される方は多いです。以前からこのような相談はありましたが、最近増えているように感じます。
先日も吸えなくて困ってらっしゃるママが来院されました。赤ちゃんは生後1ヶ月。出産したところでは、「赤ちゃんのお口が小さいからかな?」「お口が大きくなるまでは吸いつけるのは難しいかも?」「ママのおっぱいの先が出ていないので吸いにいのかな?」と言われていたそうで、哺乳びんの乳首をおっぱいの先につけて飲ませて、その後に母乳を搾乳して哺乳瓶で飲ませていらっしゃいました。授乳にものすごく時間がかかって、ほとんど眠っていないとのこと。とても疲れておられる様子でした。
おっぱいを見てみると先が硬くなっています。どのように搾乳しているのかと尋ねると、「赤ちゃんに少しでも母乳を飲ませたいので、一生懸命搾乳していました。うまく搾乳出来ないので、痛いのを我慢して思いきり力を入れて搾乳していました。」と。力を入れすぎて搾乳をすると乳輪部が腫れて硬くなります。硬くなってしまうと余計に赤ちゃんが吸いにくくなります。
力を入れなくてもできる搾乳方法をお伝えし、赤ちゃんが飲みやすい抱っこをしていただいて授乳を試みたところ、上手に飲むことが出来ました。
この方の場合、乳輪部が硬くなるような搾乳をしていた事と授乳の抱っこが赤ちゃんにとってちょっと吸いにくくなっていた事が原因でした。
ママのおっぱいにも赤ちゃんのお口にも、何の問題もありません。
当院にはこのような方がよくお見えになります。
おっぱいの扱い方、搾乳のちょっとしたコツなどを知っていると「しなくても良い苦労」をしなくてもすむのです。
扱い方やコツはそんなに難しいことではありません。
当院にいらっしゃらなくても、困っておられる方々にそれを伝える方法をただ今模索中です。